「オタクの街として」有名な秋葉原。
ではもし秋葉原が「オタクの街」じゃなかったら、
どのような街になっていたのでしょうか?
今回はそれを勝手に妄想したいと思います。
秋葉原がなぜオタクの街になったのか
細田貴洋
GHQの露店排除
戦後、焼け野原になった秋葉原。
そこに露店が集まり闇市が形成されました。
各露店では電子部品を売っており、すでに電気街の下地が出来上がっていました。
その後、GHQが「露店撤廃令」を出したために、
現在の総武本線ガード下に露店が集まり「秋葉原ラジオセンター」や「秋葉原ラジオストアー」といった商業施設がオープンしました。
細田貴洋
だから、その代わりに秋葉原ガード下にお店出していいよってことになったんですね。
これにより秋葉原は電気街として発展していきます。
今もガード下に残る「秋葉原ラジオセンター」。所狭しと商品が並んでいます。
電気街からオタクの街へ
その後はさまざまな電器店が集まり「石丸電気」や「ラオックス」など有名な家電量販店を生み出すなど、日本有数の電気街となりました。
扱う商品も電子部品、家電製品からパソコンへと変化していきました。
そのパソコンを買いに来ていた客層(いわゆるパソコンマニア)にうけたのが「アニメ・ゲーム」といったカルチャーで、
徐々に「アニメ・ゲーム」を専門にしたお店も秋葉原に進出。
これにより秋葉原は「オタクの街」として完成したのです。
細田貴洋
秋葉原を代表する電器店だった「石丸電気」は「エディオン」に。そのとなりに「ラオックス」があります。(Googleストリートビューより)
電気街にならなければオタクの街もなかった
ここまで秋葉原が電気街に、そしてオタクの街になった経緯を見てきましたが、
秋葉原がオタクの街になるきっかけは、電気街。
そして秋葉原が電気街になるきっかけは、GHQの「露店撤廃令」によって露店が秋葉原のガード下に集まったことでした。
つまり「露店撤廃令」が出されたとき、
各露店が秋葉原に集まらなく、各地に散らばっていたら、
秋葉原は電気街にはならなかった=オタクの街にならなかった
といえます。
今回は「秋葉原に露店が集まらなかった」=「電気街にならなかった」=「オタクの街にならなかった」と仮定して、
戦後、電気街・オタク街にならなかった秋葉原がどのように発展したかを妄想してみます。
細田貴洋
(余談) 今ごろは巣鴨が「オタクの街」になっていたかも…
細田貴洋
「おばあちゃんの原宿」がオタ街になってたかも…って話。
実は巣鴨は「ハム(アマチュア無線愛好家)の街」だったそうです
昭和の時代、巣鴨駅の周辺は秋葉原に次ぐ“ハムの街”でした。JARL(日本アマチュア無線連盟)の本部や無線雑誌の出版社、JAIA(日本アマチュア無線機器工業会)の事務局のほか、無線ショップや電子パーツ店も5~6件あったそうですよ。
引用:月刊FBニュース Masacoの「むせんのせかい」 より https://www.fbnews.jp/202008/musennosekai/index.html
もし各露店(電子部品や無線機を販売)が秋葉原を去っていたら、巣鴨に移っていたでしょう。
そして、今頃巣鴨が「オタクの街」になっていたかもしれません。
日本アマチュア無線振興協会(JARD)は巣鴨にあります。
もしオタクの街じゃなかったら
妄想① 丸の内に次ぐオフィス街に!?
細田貴洋
かつて秋葉原には貨物駅があり(1890年~1975年)、物流の拠点として、
また近くを流れる神田川を使い船で荷物が運ばれるなど、水運の拠点でもありました。
細田貴洋
このように秋葉原は交通・物流の要所であり、
駅前には神田青果市場ができ、日本通運(物流業)の本社もありました。
細田貴洋
「日本通運が21年9月に本社移転を決定」物流の専門紙 カーゴニュース:
http://cargo-news.co.jp/cargo-news-main/873
1988~1990年の秋葉原駅前。神田青果市場と日本通運の旧本社があります。
(地理院地図(国土地理院)を加工して作成)
2017年の秋葉原駅前。神田青果市場は「秋葉原UDX」や「秋葉原ダイビル」に。日本通運旧本社は「住友不動産秋葉原ビル」になりました。
(地理院地図(国土地理院)を加工して作成)
もしオタク街でなかったら、
交通・物流の要所としての立地、そして東京駅から山手線で二駅という立地を生かして、
日本通運本社のような大企業の本社が集まり、
丸の内に次ぐオフィス街、新橋のようなサラリーマンの街になっていたかもしれません。
細田貴洋
丸の内に次ぐオフィス街になる日も近い…
秋葉原、「オフィス街」へ急変貌する街の強み 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/218688
妄想② 伊勢丹などの百貨店が並ぶファッションの街に!?
細田貴洋
有名百貨店「伊勢丹」。
その発祥の地は、実は秋葉原でした。
秋葉原駅から少し歩いたところ、現在の「住友不動産秋葉原ファーストビル」が発祥の地とのこと。
伊勢丹発祥の地は、「住友不動産秋葉原ファーストビル」になっている。
地上23階建ての高層ビル「住友不動産秋葉原ファーストビル」
そこに「伊勢丹発祥の地」という石碑があったらしいのですが、現在は撤去されています。
細田貴洋
なぜ伊勢丹が秋葉原で生まれたかのかというと、
江戸から明治にかけて、秋葉原周辺の神田川沿いには庶民のための古着屋がたくさんあり、
今でいう原宿みたいなエリア(ファッションの街)だったそうです。
そのエリアで今の伊勢丹である「伊勢屋丹治呉服店」が創業したとのこと。
1886年11月 神田旅籠町(現在の秋葉原)で創業した「伊勢屋丹治呉服店」
出典:「伊勢丹のあゆみ」三越伊勢丹ホールディングス公式ホームページ https://www.imhds.co.jp/ja/business/history/history_isetan.html
もし秋葉原がオタク街でなかったら、
銀座のように有名百貨店やファッションブランドが立ち並び、
なおかつ原宿のような古着屋もある「ファッションの街」になっていたかもしれません。
妄想③ 街中に水路が…東洋のベネチア!?
細田貴洋
先ほど紹介したように、秋葉原は水運の拠点でもありました。
ヨドバシAkibaの近くにある秋葉原公園には神田川に続く水路が通っており、
ヨドバシAkibaは船溜まりでした。
2017年の秋葉原駅周辺地図。(地理院地図(国土地理院)を加工して作成)
1945~1950年の秋葉原駅周辺地図。ヨドバシAkibaは船溜まり。秋葉原公園は神田川につながる水路でした。
(地理院地図(国土地理院)を加工して作成)
もし秋葉原がオタク街でなかったら、
街中に水路が張り巡らされ、水運の街として発展。
のちに水運はなくなりますが、水路をメインとした観光地として整備され、
「東洋のベネチア」のような観光地として有名になっていたかもしれません。
妄想④ 都心有数の学園都市に!?
細田貴洋
秋葉原の近くには
明治大学や日本大学、東京医科歯科大学、順天堂大学などがある御茶ノ水エリア、
東京大学のある本郷エリア、
といった大学が密集するエリアがあります。
実は秋葉原周辺にはたくさん大学があります(ピンをクリックすると、詳しい情報が見れます。)
もし秋葉原がオタク街でなかったら、
交通の便の良さ、近くに他の大学や学生街があるという理由で
秋葉原にも大学があつまり、
高層ビルのキャンパスが立ち並ぶ「学園都市」のようになっていたかもしれません。
まとめ
いろいろ妄想してきましたが、
近年は秋葉原ダイビルやUDXといった高層ビルが建設され、
そのビルのほとんどがオフィスになっています。
これも秋葉原がオフィス街にふさわしい立地・環境ということなのでしょう。
もしかしたら将来、本当に丸の内に次ぐオフィス街になるかもしれません。
電気街・オタク街が生き残るのか、それともすべてオフィス街になってしまうのか…
今後の秋葉原の発展に注目です!
おわり
参考URL
「貨物として開業した秋葉原駅」三井住友トラスト不動産:https://smtrc.jp/town-archives/city/kanda/p05.html
「このまちアーカイブス~神田~」三井住友トラスト不動産:https://smtrc.jp/town-archives/city/kanda/index.html
「伊勢丹のあゆみ」三越伊勢丹ホールディングス:https://www.imhds.co.jp/ja/business/history/history_isetan.html
「伊勢丹はアキバ生まれ、ルノアールは…意外な創業物語 東京ふしぎ探検隊(8)」日経BizGate:https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXNASFK2401C_24082011000000
「アキバはかつて”原宿”だった?? 創業250年の老舗が語る、オタクの街・秋葉原の歴史」ジモコロ:https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/tatsui03
「住友不動産秋葉原ファーストビル」竣工。石丸・ヤマギワ跡地」impress Watch:https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1223360.html
この記事を書いた人
細田貴洋
地理・地図に詳しい【地理・地図ライター】。大学で地理学(都市地理学)を学んだあとライターとしての活動をスタート。FM NACK5にも出演。地理がテーマの個人ブログ「芸術地理学通信」、地理ネタ専門YouTubeチャンネル「細田貴洋の地理ちゅーぶ」も運営中。詳しくは「細田貴洋 地理」で検索!
▼関連記事
▼おすすめ記事